歯周治療

Case 07:侵襲性歯周炎の治療 =非外科=

【名前】K.Hさん(女性)
【生年月日】1967年8月2日
【既往歴】なし
【初診日】2008年9月10日
【主訴】奥歯が痛む・下の前歯がグラグラする
【パーソナルデータ】
歯磨き習慣:1日3回 3~5分程度
喫煙:なし
口呼吸あり


初診時の口腔写真と検査結果

レントゲン写真
  口腔写真  
口腔写真 口腔写真 口腔写真
  口腔写真  
検査結果検査結果

全顎的に水平的・垂直的な骨吸収が見られ、深い歯周ポケットがあり、そのほとんどから出血・排膿が確認できる。
BOP=97%と歯肉の炎症も強く、前歯部・臼歯部共に1度~3度の動揺あり。また、下顎前歯部については多量の歯石沈着の為、ポケット測定不能。
患者さんは過去にブラッシング指導の経験はなくブラッシングは全て自己流の為、 PCR=38.7%とプラークコントロール不良。プラークの質はベタベタとしており、歯ブラシのみでの除去は困難。


初回TBI内容

  • 歯周治療に重点をおいた処置が不可欠。
  • 侵襲性歯周炎の疑いがある為、細菌検査の実施。
  • 細菌検査の結果によっては抗菌療法を行なう必要もある。
  • 特に動揺の大きな歯牙(33~43)のT-Fix
  • 臼歯部ガイドによる咬合性外傷がみられる為、咬合調整。
  • セルフケアが困難な歯牙(18、38、48)の抜歯。

細菌検査
歯周病検査報告書
<検査内容>
  • 唾液量と唾液pHの測定
  • 生活習慣や口腔内の様子についての問診
  • プラークの付着状況と歯肉の炎症の程度
  • 歯周ポケット内より検体採取

<検査結果>
  • 唾液の量2.4ml/5分(ハイリスク)
  • 唾液のpH7.0(ローリスク)
  • 口腔内総菌数 3,600,000(ハイリスク)
  • A.a菌比率(%)0.016(ハイリスク)
  • P.g菌比率(%)2.75(ハイリスク)

重度の歯周炎に最も影響を及ぼすといわれている歯周病の3大悪玉菌(Red Complex)の一つであるP.g菌が検出され、またA.a菌が検出された事で、侵襲性歯周炎に罹患していることが分かった。まずは原因となっている細菌を減らす事が先決となる。
また、口呼吸があり唾液量の減少がみられる為、こまめな水分補給やマスクの着用、口唇の乾燥を防ぐためにリップクリームの使用を勧めた。


抗菌療法開始

特定の細菌に作用する抗生物質を一定期間服用してもらい、その間に歯周基本治療を行なう。
、プラークコントロール不良の為、再度TBIにて来院して頂き、セルフプラークコントロールの向上を図る。
来院時には毎回PTC・バイオフィルム破壊の実施により、徹底したプラークコントロールを行なう。


抗菌療法後の口腔写真と検査結果

  口腔写真  
口腔写真 口腔写真 口腔写真
  口腔写真  
検査結果検査結果

歯肉の炎症が改善され、BOP=19%と安定してきた。
プラークコントロールについては、臼歯部の舌側や歯間部に磨き残しがみられ、まだ患者さんのみでの清掃だけでは不十分。
この頃にはプラークの質も以前のベタベタしたものから、比較的サラサラとしたものへと変化がみられた。


TBI内容

歯肉の炎症が改善されてきた為、歯ブラシの硬さを(S)→(M)に変更。
再度バス法の実施と歯間ブラシ(M)の使用について指導。


その他の処置

33~43のT-Fixと咬合調整後、18・38・48の抜歯
⇒その後、メンテナンスへ


メンテナンス内容

●毎月1回のPMTCと歯周病3DSの実施(イソジンゲルにて)
●プラークコントロールレベルの確認
●T-Fixと咬合のチェック
●半年に1回、歯周ポケット測定と唾液量の測定


メンテナンス中再評価

レントゲン写真
  口腔写真  
口腔写真 口腔写真
   
検査結果 検査結果

歯肉の炎症はコントロールされ、BOP=14%と比較的安定している。
上皮性の付着の獲得はあるものの、臼歯部にはまだ深いポケットが残っている為、定期的なプロフェッショナルケアが不可欠。31には歯肉退縮がみられる。
プラークコントロールについては、やはり歯間部を中心にプラークの付着があり、まだアンダーブラッシング気味だが、以前と比較するとプラークの質が変化したことでブラッシングでの除去がしやすくなった事もあり、今後さらなる改善の余地あり。
歯間ブラシのサイズを(M)→(L)に変更し、その使用法と歯磨圧を再度確認。


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